『東京を経営する』 渡邉美樹/著(サンマーク出版) 4月10日に投開票される東京都知事選に向け、世間の注目が集まっています。1984年に「つぼ八」FCオーナーとして起業し、ゼロから年商1100億円を超えるグループを築いた渡邉氏のこのタイミングでの出版は、非常に戦略的だと感じます。書店で平積みにされることによる広告効果は計り知れない。どのように東京に経営的な手法を導入しようとされているのか、一読しておきたいです。 『高学歴でも失敗する人、学歴なしでも成功する人』 勝間和代/著(小学館) 勝間ファンならずとも惹かれるタイトルです。書籍の内容紹介の文脈から、版元の小学館さんや勝間さんがかなり力を入れた作品になっていると感じます。マッキンゼー出身者ならではの分析力で、成功する人に必要な要素は何かを紐解いてくれるでしょう。 『メッシュ すべてのビジネスは<シェア>... 続きを読む
Archive for the ‘書評’ Category
起業のファイナンス -起業家が知るべきファイナンスとベンチャーの生態系
3月 3日 | 投稿者:編集者 | 書評『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』 磯崎哲也 著 公認会計士、カブドットコム証券社外取締役、ミクシィ社外監査役等を務める著者(磯崎哲也氏)が、起業にまつわるファイナンスについて、わかりやすい語り口でまとめている。 著者の見解では、足りないのは資金量ではなく、ベンチャーを起業してやってみようという人達やイケてるベンチャーであり、専門家のサポートも含めて、生態系を構築していくことが必要だと説く。 本書の構成として、ベンチャーや起業の現状、ベンチャーファイナンスの全体像、会社の始め方、事業計画の作り方、企業価値、ストックオプション、資本政策の作り方、投資契約と投資家との交渉、種類株式について、各章ごとに解説している。 新しいトピックスとして、種類株式が取り上げられているが、具体例を交えて、起業家と投資家の双方のメリットになるスキームのイメージを与えている。... 続きを読む
芸術家のための起業論、起業家のための芸術論-作品が16億円で落札されるまでに-
2月 25日 | 投稿者:Ryojiro Yamamoto | 書評, 起業家『芸術闘争論』 村上隆 著 2008年5月、ニューヨークのサザビーズで、村上隆氏による等身大フィギュア「マイ・ロンサム・カウボーイ」(1998年制作)が約16億円で落札された。本書の前著にあたる『芸術起業論』(幻冬舎、2006年)には、当時1億4,400万円で落札されたペインティング「NIRVANA」が、「日本人の一つの芸術作品としては史上最高額の価格」と書かれているので、その後の2年間で世界的評価がより一層劇的に高まったことが窺える。昨年は、賛否を呼んだベルサイユ宮殿での展覧会もあった。 自らの耳を削いでまで芸術に命を賭けたゴッホの時代と同様に、村上氏も36歳頃まで「コンビニの裏から賞味期限の切れた弁当をもらってくるような」生活をしていたという。芸術的才能が世に出るまでには長い雌伏の日々があり、加えて金余りの現代には、芸術家は豊かさとも闘わなければならず、「芸術家の実践... 続きを読む
年間4,200万円を稼ぐプロブロガーを生み出すプラットフォーム
2月 16日 | 投稿者:店長 | 書評 タグ: ソーシャルメディア『ソーシャルメディア革命 「ソーシャル」の波が「マス」を呑み込む日』 立入勝義著 本書によれば、アメリカをはじめ世界では年間数十万ドル(日本円で数千万円)を稼ぎ出すプロのブロガーが続々と誕生していると書かれています。日本でもホリエモンこと堀江氏などは、有料メルマガで年間1億円以上を売り上げていると言われますが、「知名度の高い人がコンテンツを有料化する」という流れが一般的です。一方、アメリカの場合は、認知度のない個人がブログを立ち上げ、プロとして商売が成立しているようです。 日本とアメリカでは何が違うのか。その背景にあるものが、ソーシャルメディアというプラットフォームです。 本書は、米国に在住し、自らもプロブロガーとして活躍されている立入勝義氏(ブログ『意力』を運営)によって書かれています。フェイスブックやTwitterといったソーシャルメディアツールが経済や社会、人... 続きを読む
文盲の母、山の斜面ではいつくばるように暮らした幼少の記憶
2月 11日 | 投稿者:記者 | ベストセラー, 書評 タグ: 姜尚中『母-オモニ-』(集英社、2010年6月) 姜尚中/著 政治学、政治思想史専攻の姜尚中氏は、東京大学大学院教授である。在日では最初の東大教授ではないかという。 在日二世である著者の母(オモニ)は完全な文盲だった。母は、鄙びた田舎の小作人の倅で日本に出稼ぎに行っていた父と、出生地である桜の名所鎮海(チネ)で見合いし、大東亜戦争勃発の年、再び日本に戻った父を追い16歳で新婚生活を始めた。場所は巣鴨三丁目だったという。母は日本語の読み書きができなかったばかりでなく、旧弊や植民地支配の差別の中で小学校にも行けず、民族の言葉すら知らなかった。 一方、満州事変の年に15歳で日本に渡った父は、母ほどの完全な文盲ではなかったが、どれだけの職と住処を転々としたかわからないほど、その青年期は流転の日々だったという。 1950年、著者は両親が戦後移り住んだ熊本の在日韓国・朝鮮人集落で生まれ... 続きを読む
世界人口の1割に迫る、世界最大のSNS Facebook(フェイスブック)創設物語
2月 4日 | 投稿者:店長 | 成長企業研究, 書評 タグ: facebook, ソーシャル・ネットワーク, フェイスブック『Facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』 ベン・メズリック/著 夏目大/訳 2010年7月、ユーザー数が5億人を超えたと発表された世界最大のSNS「Facebook」創設の物語です。国連の統計によると、2010年時点の世界人口は69億人。Facebookのユーザー数は、その増加速度から考えると2011年中に6億人の突破は間違いなく、7億人、つまり世界人口の10%に迫る勢いを示しています。ユーザー数の規模が国に匹敵することから「中国(13億人)、インド(12億人)、Facebook」と言われます。 本書では、ソーシャル・ネットワークFecebookの生みの親であるマーク・ザッカーバーグ氏がハーバード大学在学中に同サイトを立ち上げるまでの経緯にはじまり、爆発的な支持を受けユーザーが広がっていく中、スタートアップベンチャーが生き残るために迫られる様々な決断と... 続きを読む
ハーバード大学にいる日本人は101人。多い?少ない?
1月 27日 | 投稿者:店長 | 書評 タグ: ハーバード, 大前研一, 柳井正『この国を出よ』 大前研一/柳井正著 世界で最も優秀な頭脳・才能が集まる大学である、ハーバード大学の学部・大学院の国別留学生数の統計値が紹介されていました。2009~2010年度、日本留学生数は101人。この数は多いのか、少ないのか。ちなみに、お隣の韓国が314人で、中国が463人とのことです。人口や経済事情などに違いがあるので一概には言えないと思いますが、1999~2000年度の数値と比較すると国の『勢い』を示しているとも考えられます。当時、日本人は151人、韓国が183人、中国が227人でした。つまり、この10年で日本が33%を減ってしまっているのに対して、韓国が71%も増え、中国にいたっては104%増と2倍以上になっています。 今の日本の若者の「内向き志向」を示す一例として、大前研一氏が本書で紹介しています。 本書では、大前研一氏とファーストリテイリング(ユニ... 続きを読む
創業10年で売上1000億円。急成長企業が唱える10のコア・バリューとは
1月 25日 | 投稿者:店長 | 成長企業研究, 書評 タグ: ザッポス, トニー・シェイ『ザッポス伝説 アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』 ザッポス・ドットコムCEOトニー・シェイ/著、豊田早苗・本荘修二/訳 1999年にオンライン靴店としてスタートした「ザッポス.com」は、類まれなるカスタマー・サービスを追及し、顧客に愛され、急成長を遂げてきました。2009年にアマゾンが12億ドル以上(約1,100億円)の評価額で買収したニュースは記憶に新しいところかと思います。ザッポスについては、2009年11月に『ザッポスの奇跡』(石塚しのぶ/著)が出版され、一部のブロガーやビジネス書の愛読者の中で話題に上り、昨年12月にCEOのトニー・シェイ氏の原著の日本語訳が出版されたことで、再注目を浴びています。 ザッポスは創業10年ほどで、売上高1000億円以上に急成長をし、今なお成長を続けています。同社の急成長を支えているが、クチコミとリピートです。同社が事... 続きを読む
孫正義氏の人生の中で一番大切なスピーチ
1月 18日 | 投稿者:店長 | 成長企業研究, 書評 タグ: スピーチ, ソフトバンク, ビジョン, 孫正義, 戦略『ソフトバンク新30年ビジョン』 ソフトバンク新30年ビジョン制作委員会編(ソフトバンク・クリエイティブ) 2010年6月25日、ソフトバンクの株主総会で、孫正義氏が発表した新30年ビジョンのスピーチとビジョン策定にいたる同社のプロジェクトについて書かれた本です。巻末には、スピーチを収録したDVDがついていて、音と映像で当日のスピーチの興奮を味わうことができます。 孫さんにとって、30年ビジョンを作るのは2回目のことです。デジタル情報革命の旗手になるべく1981年日本ソフトバンクを設立した当時、たった二人のアルバイトを前にみかん箱の上に立ち、30年後に豆腐のように1丁(兆)、2丁(兆)と数える規模の会社にすると宣言した話はあまりにも有名です。それから30年を迎え、当時思い描いたように、同社は売上高2.8兆円、営業利益4,658億円のグループに成長しました。 「情報革命で... 続きを読む
どん底から7年連続増収。マクドナルドトップが語る復活劇
1月 18日 | 投稿者:博士 | 書評 タグ: マクドナルド『ハンバーガーの教訓―消費者の欲求を考える意味』 原田 泳幸 著 Mac(マック)からMc(マック)へ」-華麗な転身で話題を集めた著者が、マクドナルドでの話を中心に、企業経営やビジネスパーソンにとっての人生、働くということについて語った本である。 最大の注目はやはり、7年連続で既存店売上高が前年割れとどん底であったマクドナルドを、どうやって7年連続の増収、全店売上高で過去最高を記録する(2010年)までに劇的に復活させたのかという点であろう。 その方法はいたってシンプル、基本に立ち返ること、具体的には店舗におけるQSC(品質、接客、清潔)の向上であった。一見表層的なスローガンにも受け取れるが、著者らの取り組みは全くちがう。 企業はコアに据える価値に基づく「らしさ」を体現することでこそ、競合と普遍的に差別化された強みを発揮することができるという考えの下、安易な新規事業・商品の開発や不採算店舗... 続きを読む