松下幸之助に学ぶ希望の哲学
5月 12日 | 投稿者:室賀 康 | 書評本書は一代で松下電器(現パナソニック)を築き上げた松下幸之助氏
が持つ経営哲学について、松下幸之助研究の第一人者であるPHP研究所
専務取締役の佐藤悌二郎氏とアチーブメントグループCEOである
青木仁志氏が三日間に及ぶ対談で述べた本である。経営手法というより
もさらに大きな概念、経営哲学について説き、実際の経営場面と照らし
合わせながら話が進むので、読み手にも理解しやすい。
この書を読み進めていくと、松下幸之助はまず第一に人の良いところを
見つけ出す能力が非常に優れていると同時に、その人が成果を出すに至
る過程について実に丁寧に経営を進めていることがわかる。
私が一番印象に残った内容は、当時松下電器の下請け工場で働いていた
職人気質の中尾哲二郎さん(松下電器の元副社長)を見て、
「いい職人だ」と評価し、アイロンやラジオの開発を託して大成功に
導いた話である。中尾さんを見て「扱いにくい」と思う人がたくさん
いたなかで、それを「周りとうまく折り合えないほど癖や個性がある
としても、その人は人間関係の技術を磨くところまで余裕がなかった。
それくらい何かに夢中になって打ち込んだ」と、良いほうに解釈する
ことで、その才能が生かされたのである。
目先の事実よりも、その背景に存在する過程や可能性を見出す能力が
大きな成果を生み出す一例を学ぶことができる。その根底には松下幸之助
の生き方の哲学があり、本書により松下幸之助の哲学に触れることで
仕事を進める上での本質から成功への原理を知ることができる
のかもしれない。