Archive for the ‘書評’ Category

異次元金融緩和の狙いと出口リスク

10月 21日 | 投稿者:T. H. | 書評

著者の翁邦雄さんは、元日本銀行員であり、かつ経済学のph.D.を取得済みであるため、金融政策を理論的にも実務的にも語ることができる。その上、抽象的な経済理論をとてもわかりやすく、イメージが湧くように記述なさる方でもあり、経済学初学者にも手の届く本を書かれている。この「日本銀行」は、経済学を学んでいない人にもわかりやすいものであると思われる。そして、目下の黒田日銀総裁による金融政策への理解を深めてくれるため、ビジネスマンはもちろん、学生、主婦の方々にもお勧めの本である。 プロローグで、現在の世論は中央銀行の金融政策に過度な期待を寄せていることへの懸念を述べている。金融危機沈静化に多大な貢献をする輪転機の回転にも限界があるのだ、と。そして、シンプルで過激な主張が、慎重で断定を避ける主張より優勢になりやすく、それが今回の黒田総裁をはじめとするリフレ派の金融政策につながった、としている。以降... 続きを読む

『ニッポン景観論』 アレックス・カー著

10月 10日 | 投稿者:FUJIO MIYACHI | 書評

『ニッポン景観論』 アレックス・カー著 集英社新書 読んだ時にとてもしっくりと来た。ボク自身もそうであるが、何故、海外の景色や街並に度々魅せられるのだろうか。感覚的に素敵だと思うものは世界中にあるのに、何故日本ではそう思うものが少ないのだろうか?そんな疑問が以前から頭の隅から離れずにいた。今回、著書を読んで分かったことはニッポンの日常は景観という視点からするととても残念であるということ。意見は分かれるところだが、割り込みや窃盗も少なくモラル意識の高い日本人であるのだから、マナーを促す看板を反映させることなくともマナーは守れるだろうし、景観も洗練させることが出来るように思う。悪い意味での日本らしさ、型通り、杓子定規であることは、景観、ひいては日本の観光全体にも悪影響を及ぼす。いや、既にか?なんにせよ、僕は統一感があり、計画性のある街並が好きなので著者の意見には全面的に賛成である。山に登... 続きを読む

村上春樹著『走ることについて語るときに僕の語ること』を読む。

7月 20日 | 投稿者:Ryojiro Yamamoto | 書評

読みたいと思いながらどこかで敬遠していたのか、なかなか頁をめくれなかった本。自分が走らなくなってしまったからだろうか。 タイトルは、レイモンド・カーヴァーの『What We Talk About When We Talk About Love』によるという。ジョギング好きの作家による軽いエッセイだろうと思って読み進めたところ、小さくない衝撃を受けた。この本に10年以上もかけたと著者自身が記している通り、エッセイではなく「メモワール」である。書くこと、走ること、生きること、創造することについての、ずしりとした言葉や文章が随所にある。 「しかし僕は思うのだが、息長く職業的に小説を書き続けていこうと望むなら、我々はそのような危険な(ある場合には命取りにもなる)体内の毒素に対抗できる、自前の免疫システムを作り上げなくてはならない。そうすることによって、我々はより強い毒素を正しく効率... 続きを読む

モチベーションを思うまま高める法

7月 16日 | 投稿者:藤井健人 | 書評

「変革」や「革新」と呼ばれるような激的な転換期には、一つの秩序秩序が崩壊し、新しい秩序が生まれようとする。高度経済成長時代より続く古ぼけた社会システムに終わりを告げ、私たちは社会や組織との新しい関係性を模索しなければならない。 生活基盤が安定し、ほとんどの個人が物理的には不足のない豊かな暮らしができるようになり、グローバル化やIT革命により価値観が多様化した今、共通の目標、徹底した管理教育、指示と指導、評価と報酬を礎にした外側からの動機付けには効果がなくなってきた。そこで著者は、個人の心の中から湧きあがってくるワクワ クする気持ちに着目し、報酬のために仕事をするのではなく、仕事が面白いから仕事をする環境作りを目標とせよと説く。 この本では手っとり早く人のモチベーションを思うまま高める方法は書かれてはいないが、今後の社会においては他人からの評価をはじめとする「枠」に拠り所を求める... 続きを読む

『なぜ、真冬のかき氷屋に行列ができるのか?』

7月 14日 | 投稿者:FUJIO MIYACHI | 書評

湘南、鵠沼に店を構えるかき氷屋「埜庵」。真冬でも行列のできるかき氷屋として、有名になった。当然ながら、そこまでには苦難の道のりがあった。「埜庵」立ち上げより迷走の日々、そして現在、試行錯誤の中から生まれた繁盛法則は「埜庵」ならでは。必ずしも真新しいものばかりではなく、当たり前の事も実は多い。心を込めた積み重ね、その当たり前の難しさを実践したからこそ、この店には多くのファン(ノアラーと呼ぶ)が多くいる。「win-win」ではなく「love-love」を目指した「埜庵」スタイルのビジネスモデル。僕自身、個人事業であるので「win-win」よりも「love-love」という考え方は身近でしっくりとくる。飲食店だけでなく独立起業やスモールビジネスを考えるならば、オススメの1冊。... 続きを読む

世界遺産にされて富士山は泣いている

6月 23日 | 投稿者:FUJIO MIYACHI | 書評

富士山が世界文化遺産になって1年が経過。各地で世界遺産を祝うムードで包まれる一方で、実はユネスコから大きな宿題が課せられていた。その条件をクリア出来なければ富士山は「危機遺産」リスト入りの課題もあるという…。 世界中の山を登り歩いた著者だからこそ持つ事の出来る見識。今後、富士山が日本人だけでなく、世界中の人々から愛され、憧れの地であり続ける為にはどのような取り組みが必要なのか?富士山を取り巻く現状を考える。 世界遺産に選ばれたことはゴールなのではなく、実はここからがスタート。認定された遺産をどのように守っていくか?そこが問われている。しかし、報道ではその部分が大きく取り上げられる事はほとんどなく…恥ずかしながら僕自身、2016年までに課せられた条件の事を知りませんでした。何事にもメリットがあればデメリットもある。見たくないものから目を背けるのではなく課題ときちんと向き合う。今、世界遺産... 続きを読む

金持ちゾウさん、貧乏ゾウさん 仕事と人生の変わらない法則

5月 28日 | 投稿者:FUJIO MIYACHI | 書評

カネー村のゾウたちが繰り広げる寓話的ビジネスストーリー。「ヘッジホント」という投資話をきっかけに村は大騒動に…。 物語を通じて考えさせられるのは「お金」とは一体なんなのか?そして、その「お金」とどう向き合うか、向き合うべきなのか?自分が今後生きていく上で「お金」という価値に固執すること無く、冷静に物事と向き合い、身の丈にあった行動、日々1つ1つ積み重ねる事の大切さに改めて気付かされる1冊。... 続きを読む

Sign with Me 店内は手話が公用語

12月 15日 | 投稿者:店長 | 書評, 起業家

2012年8月、私は、東京大学本郷キャンパスの近くにある「-Social Cafe-Sign with Me」に初めて足を運んだ。階段を2階に上がり、ドアを開くと「ありがとう」「おいしかった」等、来店されたお客様がお店やスタッフへの感謝の言葉や要望を壁一面に書き込んだ大きなホワイトボードが目に入った。また、店に入るとお店のスタッフからの挨拶がなく、代わりにそばに駆け寄ってきてくれ、注文の仕方が書かれたボードを持ちながら身振り手振りで教えてくれた。 とても新鮮な感覚に包まれたことを今でもよく覚えている。ここは手話によるコミュニケーションを前提としたお店なのだ。私は、一通りの注文を済ませ、席に着き、周りを見渡してみた。笑顔で手話で話す女の子たち、美味しい食事に何気ない会話を楽しむカップル等、温かい空間の中で、ろう者も聴者も(*)それぞれ充実した時間を過ごしていた。私自身、1時間程... 続きを読む

ドラッカー著『イノベーションと企業家精神』を読む

7月 14日 | 投稿者:旅人 | 書評, 経営学

『イノベーションと企業家精神』 P.F.ドラッカー著/上田惇生訳 (ダイヤモンド社) 本書は、1985年に出版されたドラッカーの名著の一つです。アメリカの分析を中心に、冒頭で起業家経済、起業家を定義し、その後イノベーションを生み出す7つの機会について事例と共に書かれています。 「ベンチャー」というとハイリスクハイリターン、ハイテクといったイメージが先行しますが、それは誤った認識であることがわかります。実際のデータをもとに明らかにされています。また、「起業家」について、ややもすると直感的、気質、才能といった言葉で表されますが、基礎となるのは原理、方法であり、行動であると定義しています。 イノベーションの部では、第五の機会として挙げられていた「人口構造の変化に着目する」が面白かったです。社会はなかなか変わらないようで一気に変化するという側面があります。ただ、人口構造に着目し... 続きを読む

ユニクロが生まれ、世界企業になった理由。-誇大妄想というほどの巨大な夢と圧倒的な読書量-

6月 30日 | 投稿者:Ryojiro Yamamoto | 成長企業研究, 書評, 起業家

『柳井正の希望を持とう』 柳井正著(朝日選書、2011年) ユニクロについて、オーナーでありCEOでもある柳井正氏について、今さら説明はいらないだろう。しかし、この僅か200ページ余りの新書には、人口17万人の小さな地方都市で生まれた一商店が、なぜかくも世界中で愛され、今もあくなき拡大を続けているのか、その理由と秘密が、余すことなく語られている。 柳井氏は大企業を受け継いだ御曹司でも、エリートコースを突き進んできた人間でもない。縁故で入った会社を9ヶ月で辞めて宇部に出戻り、父親が経営する2つの店を任されただけの、「町の紳士服屋の主人」でしかなかった。しかし、既製服の仕入れと販売という非効率な商売の中で、徐々にベーシックな商品に対する期待を抱くようになり、品質の良い商品をリーズナブルな値段で毎年売っていくことができれば儲かる、と考え始めるようになる。地方での、さして競争力もない... 続きを読む

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