Sign with Me 店内は手話が公用語

12月 15日 | 投稿者:店長 | 書評, 起業家
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Sign with Me 店内は手話が公用語

2012年8月、私は、東京大学本郷キャンパスの近くにある「-Social Cafe-Sign with Me」に初めて足を運んだ。階段を2階に上がり、ドアを開くと「ありがとう」「おいしかった」等、来店されたお客様がお店やスタッフへの感謝の言葉や要望を壁一面に書き込んだ大きなホワイトボードが目に入った。また、店に入るとお店のスタッフからの挨拶がなく、代わりにそばに駆け寄ってきてくれ、注文の仕方が書かれたボードを持ちながら身振り手振りで教えてくれた。

とても新鮮な感覚に包まれたことを今でもよく覚えている。ここは手話によるコミュニケーションを前提としたお店なのだ。私は、一通りの注文を済ませ、席に着き、周りを見渡してみた。笑顔で手話で話す女の子たち、美味しい食事に何気ない会話を楽しむカップル等、温かい空間の中で、ろう者も聴者も(*)それぞれ充実した時間を過ごしていた。私自身、1時間程、店内でゆっくりと過ごす中で、とても優しい気持ちで一杯になった。

* 本書では、著者の意向により、聴覚障害者を「ろう者」、健聴者のことを「聴者」と呼んでいるので、それに倣った。

本書のタイトルにもある「Sign with Me」は、本書の著者の柳匡裕氏がオーナーをされている、食べるスープを提供するカフェである。
本書では、柳氏ご自身が耳の聞こえないろう者として、社会の中で「ろう者が働く」という厳しい現実に挫折し、もがき苦しんできたことが描かれている。ろう者は、サポートしてくれる人に「ありがとう」と言うことがあっても、「ありがとう」と言われることがほとんどない、という現状。柳氏は、もっと、ろう者が仕事で能力を発揮できる環境を作り、ろう者も多くの人から「ありがとう」を言われるような社会を作りたいと考え、『ありがとうの種』を設立し、「Sign with Me」を開店した。

そこには、多くの困難や失敗と、柳氏を応援する人々との出会いがあった。
例えば、同じろう者で、映画『珈琲とエンピツ』に出演し、サーフショップを経営しているサーファーの太田辰郎さんのテレビ番組で「独立は特別なことじゃない」という太田さんの言葉が起業を後押ししたとして、そのエピソードを紹介している。その太田さんとはお店で出会うことになったという。
また、スープカフェを開こうと考え、大手チェーンを中心に、フランチャイズ提携を50社近くに申し込んだが、たった1社を除き、ほとんど断わられた。中には、某有名カフェチェーンから、フランチャイズではなく、「障害の有無に関わらず一緒に働ける店をつくりましょう」という提案もあったそうだが、柳氏はありがたいと思いながらも、その提案を断った。それは、ろう者主体の店を作りたいという強い思いがあったからだ。

開業に至るまで、柳氏が様々な心の葛藤を繰り返し、それを一つひとつ克服しながら前に向かっていく姿が目に浮かび、私は、本書を読みながら、何度も涙を流した。
柳氏が、支えられている多くの人たちに日々本当に感謝し、理念と情熱を持ってビジネスに取り組んでいること、福祉という視点ではなく、障害者が自立・自律し、自尊心をもって働ける社会を何としても創り上げようとしている決意が、ダイレクトに伝わってくる。本書を通じて、働きがいのある社会とは何か、人が一生懸命生きることの大切さについて、改めて考えさせられた。お店の一ファンとして、柳氏の成功と事業の発展を願ってやまない。

-Social cafe- Sign with Me
FC提携先「ベリーベリースープ

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