現在 0円

インタビューバックナンバー
浜口隆則氏インタビュー
株式会社ビジネスバンクグループ代表取締役であり、『戦わない経営』『社長の仕事』『エレファント・シンドローム』などの著者でもある浜口隆則氏は、起業家向けオフィス「オープンオフィス」を・・・
佐々木俊尚氏インタビュー
『ブログ論壇の誕生』『電子書籍の衝撃』『キュレーションの時代』などの著者である佐々木俊尚氏は、IT業界・メディア業界のビジネス動向や未来像を鋭く分析する気鋭の・・・
永田豊志氏インタビュー
2010年、ASPアワード グランプリを獲得した成長ベンチャー、株式会社ショーケース・ティービーのCOOであり、『図解思考』『最強フレームワーク』などのベストセラー・・・
青木仁志氏インタビュー
1987年、人材教育コンサルティング会社「アチーブメント株式会社」を創業した青木仁志氏は、目標達成のプロフェッショナルとして19年間にわたり・・・
嶋田毅氏インタビュー
株式会社グロービスは、1992年の創業以来、「ヒト」「カネ」「チエ」のビジネスインフラの構築を掲げ、成長発展を続けています。・・・
出井伸之氏インタビュー
1995年4月から10年間に渡って、グローバル企業であるソニー株式会社をはじめとする、ソニーグループを率いてきた出井伸之氏。
渋澤健氏インタビュー
日本資本主義の父といわれる渋沢栄一の五代目にして、新しい資本主義の在り方を社会に問い、「滴から大河に」を実践する渋澤健氏。
本田直之氏インタビュー
レバレッジシリーズをはじめ、著書累計150万部を超えるベストセラー作家の本田直之氏。
佐々木俊尚氏インタビュー
[更新日2011/05/12]
「キュレーターによる情報革命 ~情報流通の今と未来~」第3回
聞き手 / PE&HR株式会社 代表取締役 山本亮二郎
 『ブログ論壇の誕生』『電子書籍の衝撃』『キュレーションの時代』などの著者である佐々木俊尚氏は、IT業界・メディア業界のビジネス動向や未来像を鋭く分析する気鋭のジャーナリストです。著書だけでなく、雑誌やウェブメディアを中心に幅広く活躍されています。今回のインタビューでは、電子書籍市場の現状と未来像、Twitterやフェイスブックをはじめとするソーシャルメディアにおいて存在感を増しつつあるキュレーターの役割など、ウェブを取り巻く生態系がどのように変化していくのかお話いただきました。※本原稿は、2011年4月7日に行われたインタビューに基づき作成しています。
■情報の世界で起きているキュレーション
― 言葉自体は使われていませんが、既に『インフォコモンズ』(2008年7月)や『ブログ論壇の誕生』(2008年9月)にもその概念は書かれており、数年前から「キュレーター」(*15)の重要性について触れられていますね。
 そうですね。『インフォコモンズ』という本は、かなり狙って書いた本で、今でも結構正しかったなと思っているのですが、出版した2008年当時は、あまりにも抽象的過ぎて誰にも理解されなかったんです。まだツイッターが広がっていなかったですし、SNSといってもせいぜいmixiが普及していたぐらいで、mixiなんて単なる日記の交換で、そんなところで情報が流通するなんて何言ってんだと、書いた頃は殆ど理解されませんでした。しかも書けば書くほど、どんなに分かりやすく書いても抽象論になってしまいました。その反省から、ツイッターとかが普及してきた今、抽象論を一切使わずに、具体的な文化や事象を引き合いに出しながら説明するというやり方で、『インフォコモンズ』で書いたような内容を書けば、理解してもらえるだろうと思いました。だから、『キュレーションの時代』は『インフォコモンズ』の改訂版でもあるんです。
― 数年前の時点でキュレーターの重要性に気付いたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
 ある程度の見通しというのは個人的にはありましたが、ただ、当時キュレーターのことまで書くとわからないので、時代が進むごとに、徐々に徐々に書くようにしていく方が良いということですね。ITやインターネットに関する漠然とした概念としては、大体10年くらい先まで見えている感じです。
― 「キュレーター」という言葉を初めて聞く方のために、改めてその定義を教えてください。
 「キュレーター」というのは日本語で言うと美術館の学芸員という意味です。世界中にある様々な芸術作品を集めてきて、それで並べて企画する役割です。つまり、作品として従来持っていた1個の意味ではなくて、集めることによって新しい意味がもたらされるということです。美術の世界では、情報を集めてきて、それに何らかの意味づけを与えて並べ替えることを「キュレーション」と言います。今後、そうしたことが情報の世界にもやってくるだろうというのが『キュレーションの時代』の主題です。今ではあまりにも膨大な量の情報が世界中に溢れています。その中から、いかに自分にとって必要な情報を得るのか、情報の振り分けみたいなものへのニーズが非常に多いんです。そういう振り分けがマスメディア的に一律になされるのではなくて、いろんな趣味とか、仕事とか、細かい圏域とか、それぞれで行われるようになるのではないかという未来像を書きました。
 アメリカでは2009年の終わりくらいから、たまにぽつぽつとキュレーションという言葉をブログやIT系のサイトで見かけるようになりました。以前は「キュレーション(curation)」で検索しても、そういう英語自体が出てこなかったんですけど、サイトを読んでいるとそういうことかと分かりました。それが2010年になるとあちこちで見かけるようになって、2011年の年明けくらいからは普通に英語圏のニュースサイトとかブログとかで書かれています。日本でパブリックに使ったのは多分この本が初めてです。
■膨大な数のキュレーションは、メジャーとインディーズの境界を破壊する
― 『キュレーションの時代』では、様々なアウトサイダーアート(*16)を紹介しながら、アウトサイダーはキュレーターによって発見され、「セマンティックボーダー(*17)」(自己の世界の意味的な境界)が絶え間なく組み替えられていくと、やがてインディーズとメジャーの境界は消滅していくと書かれています。創業期の起業家とベンチャー投資家の関係も同じだと思い、興味深く拝読しましたが、キュレーターの存在が今後ビジネスの世界に与える影響をどのようにお考えでしょうか。
 インディーズかメジャーか、アウトサイダーかメインストリームかというのは、結局チャネルの違いでしかありません。要するに、これがメジャーだ、メインストリームだというチャネルや枠組みはビジネス的に決定されているものなんです。言ってみれば、マスメディア的な枠組みです。膨大な数のキュレーションを行う世界では、その枠組み自体に意味はないわけです。音楽の世界で言えば、何がメジャーレーベルで、何がインディーズレーベルかは、聞いている方には意味がない。あくまでサプライサイドの問題です。ということは、キュレーションというものが普及してくることによって、アウトサイダーやメインストリームとか、メジャーやインディーズとかの違いは、全く消滅することになると思います。
 サプライサイドとして、今インディーズの音楽シーンでは、印税を50:50にしようという動きもあります。一方、メジャーレーベルの印税は3%とものすごく低いんですよ。それでは当然ミュージシャンは食えないわけです。例えば、アルバムを作っても1枚3,000円で1万枚売れたとして売上3,000万円、5人のバンドだとすると1人あたり手元に残るのは20万円にも満たないとか、ひどいことになるわけです。それではやっていけないので、インディーズでは印税を50:50にして、せめて1人何百万円かはもらえるようにしようとしています。
 そうすると、メジャーでCDを出すより、インディーズで出した方が良いじゃないかということになります。当然そういう動きが出てくるわけです。『電子書籍の衝撃』で少し書きましたけど、マドンナの例では、メジャーレーベルと契約を切って、ライブコンサートの運営会社と再契約することが実際に起きているんです。何のためにメジャーにいる必要があるのかという話になるわけです。結局、それぞれのミュージシャン一人一人がビジネスをしていくことになります。どこから流通させるかは受け取る側とのマッチングの問題です。だったら、メジャーでもインディーズでもどっちでもいいじゃないかと考えますよね。それこそ今後、売上を50:50で分け合いましょうというインディーズの取り組みが活発化してきて、メジャーから離脱しても成り立つんであれば、メジャーからインディーズに来るミュージシャンが出てきておかしくないわけです。
― 音楽業界で起きている動きは、当然、出版業界でも起こると考えられますか。
 出版の世界では、最近アメリカで加速していますけど、大手出版社でこれまで本を出していた作家が、出版社とは完全に関係なしに電子化して独自に販売するという動きがあります。今の日本の認識で言うと、大手出版社がメジャーレーベルで、電子書籍がインディーズだと思います。日本においてもアメリカと同じ方向に行かざるを得ないでしょう。
 かつては、大手出版社には権威があったわけです。講談社とか文芸春秋とかそういうところから本を出すことが偉いというイメージがありました。しかし、特に今のように電力が足りなくて、紙やインクも生産が追いつかないという状況になってくると、大手出版社から本を出すことをありがたがる必要や意味がなくなってきます。本来重要なのは、いかに読者とつながるかどうかということですので、今では出版社の権威に頼る必要が薄れています。大手から出すか、中小から出すか、あるいは電子書籍で出すかということは、チャネルを変えることに過ぎないわけだから、「最終目的が同じなら到達しやすいところから出す」という当たり前の結論にしかならないわけです。
1 | 2 | 次へ≫|
*15 美術館の学芸員という意味を情報の世界に援用した言葉。本インタビューでも詳しく解説されている。
*16 きちんとした芸術の教育を受けてなかったり、孤独な放浪者であったり、精神に障害があったりするプロでない人たちが、その時代の流行や美術理論に一切とらわれず、純粋な創作意欲に掻き立てられて表現した芸術作品のこと。『キュレーションの時代』では、ジョゼフ・ヨアキム、ヘンリー・ダーガー、アロイーズ・コルバス、八島孝一、田中悠紀など様々なアウトサイダーアーティストが紹介されている。彼らの独創的なコンテンツを見出し、コンテキストを加え、世に送り出す存在としてキュレーターの重要性が示されている。
*17 生命関係学(バイオホロニクス)の研究者であり、東大名誉教授の清水博氏が『生命を捉えなおす 生きている状態とは何か』で提唱している。動物や人間は、様々な情報の障壁を設けて、その内側でルールを保っている。この障壁をセマンティックボーダーと呼ぶ。つまり、セマンティックボーダーとは、情報のフィルタリングシステムとして機能するものである。
このページのTOPへ
Produced by PE&HR Co., Ltd. (http://www.pehr.jp) [PR] 成長ベンチャーの求人・転職支援サイト