永田豊志氏インタビュー
[更新日2011/02/18]
「革命的フレームワーク『図解思考』 ~知的生産性を高め、人々に貢献する~」第3回
聞き手 / PE&HR株式会社 代表取締役 山本亮二郎
2010年、ASPアワードグランプリを獲得した成長ベンチャー、株式会社ショーケース・ティービーのCOOであり、『図解思考』『最強フレームワーク』などのベストセラー作家でもある永田豊志氏は、仕事の効率化を図る手法を研究する知的生産研究家として多くのビジネスマンに支持されています。インタビューでは、日々の経営や仕事に『図解思考』をどのように活かしているのか、アイデア・新規事業を生み出す秘訣についてお話いただきました。
■情報整理力と記憶力が断然違う「図解思考」
― 「図解思考」を実践されたのはいつ頃からでしょうか。
本を書き始めた頃からですから、ここ2~3年の話です。「図解思考」を実践すると、仕事のパフォーマンスがかなり上がります。記憶の残り方が断然違います。
新聞等でビジネスモデルが紹介される時に、四角でサービス提供者や顧客を、矢印で提供されるサービスを、その逆向きの矢印で料金を表した図が掲載されていることがよくありますよね。非常にシンプルに描かれたビジネスモデルの図を見ていて、「どんなに複雑系のシステムになっても、それぞれの要素がどのように関係しているのか書き表すことができれば、情報を分かりやすく整理できるんじゃないか」と思いました。
まずは自分自身がやってみようと思いまして、箇条書きのメモを一切廃止し、どのくらい図や絵で記録ができるのか挑戦してみました。半年くらい続けて慣れてきたら、字でメモを取るよりも、むしろ楽しくなってきたんです。それまでは、私自身、字が上手くないこともあって、自分の書いたノートや手帳を見返したいと思うことはほとんどなかったのですが、図や絵でメモを取るように変えてからは見返すのが非常に楽しくなりました。実際のビジネスシーンでも効果があり、過去の商談を振り返るためにノートに書かれた図解を見た瞬間に、「あの話はここが問題だったな」とか「この話はここが課題だったな」とか、すぐ記憶が戻るようになったんです。
図解と言ってもデッサンとかスケッチとかの話ではないですし、単純に四角と矢印を描くだけなので、どんなに絵が苦手な人でもできますし、費用対効果としても生産性の高いスキルだと思いました。
それで「図解思考」をテーマにした本を書くことにしたんです。打ち合わせや事象を理解するための方法として、最初に『頭がよくなる「図解思考」の技術』を出版しました。
― 近著の『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』では、プレゼンテーションするときにも図解思考が使えると書かれていますが、どのような背景から出版されたのでしょうか。
ヒントは自社の中にありました。日々営業活動をしていると、「あそこの企業さんに出す提案を見てください」と言って、メンバーがいろいろな提案書を持ってくるわけです。目を通してみると、多くの場合、主張の軸がぶれている。なぜだろうと考えていたら、いきなりパワーポイントで資料を作っていることに原因がありそうだと気付きました。よく見てみると、戦略もストーリーもシナリオも何もないままパソコンに向かって資料を作っているんですね。もう1つは、メッセージの伝え方が違うと思いました。「ウチの商品はこんなに良いです」「ウチの商品はこんな機能があります」というところにフォーカスしていて、お客様の課題をどのように解決するかという道筋が非常に薄いと感じることがありました。
やはりプレゼンテーションというものは、基本的には「何かの問題を解決する」とか「現状よりもより良い状態をもたらす」という目的や背景があって、初めて意味あるものになると思います。その目的や背景を取っ払って、提案だけをお客様のところに持っていってもなかなか上手くいきません。だから、きちんとWHYのところの道筋を立てるために、プレゼンの本でも書いているように現在・未来の姿をまず描いて、そのギャップを埋める策としてこういう商品があるんですとか、こういう活動や計画がありますというような話をすべきだと思います。そのために最初はパソコンを閉じて、紙とエンピツを持って、どこかで構想だけを練る時間をつくった方が良いですよ、という話になるわけです。その構想も図解思考の技術を使うことで、四角と矢印のみで表現することができるんです。
※永田氏がプレゼンのシナリオを作る際の手法を図解にしたもの。
図解が合体ロボに似ていることから、この手法を「合体ロボ作戦」と命名した。
― 詳しくは『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』を読んでいただけばわかると思いますが、本の中で書かれていた『合体ロボ(*9)』のように表現することができるということですね。ちなみに、永田さんはどこで構想を練ることが多いのでしょうか。
会社の近くのタリーズに行ったりします(笑)。30分ほど白い手帳に構想を書いて、戻ってきてからパワーポイントを作ると、非常に効率的で作業時間が短くなりますし、シンプルで分かりやすい提案書を作ることができるなと感じます。
*9 聞き手に分かり易く印象に残るようなプレゼン手法を図解にしたもの。序論(頭)、本論(胴体と手足)、結論(台座)という3部構成で、ロボットの各パーツが、1つのトピックを表す。