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本田直之氏インタビュー
[更新日2010/03/24]
「無名の個人の時代 ~ビジネス書を読み、ビジネス書を書く~」第2回
聞き手 / PE&HR株式会社 代表取締役 山本亮二郎
 レバレッジシリーズをはじめ、著書累計150万部を超えるベストセラー作家の本田直之氏。著者のプロデュースも行っており、合計40万部を突破している。本田氏は「無名の個人の時代(※1)」や「時代のうねり」をどう捉えているのか。本田流仕事術からライフスタイルまでお伺いしました。
■インプットした情報をどう判断するか
―年間400冊以上も本を読まれるとお聞きして驚きました。普通の人にはなかなか想像できない数だと思いますが、書籍以外のものを含めて、実際にどのように情報をインプットして、そのような時代の変化を感じ取っているのでしょうか。
 インプットする情報は大量にあった方がやっぱり良くて、雑誌で言うと、ビジネス系の雑誌はほとんど読んでいますし、ライフスタイル系の雑誌も含めて毎月50冊以上は読んでいますね。新聞は、日本でもアメリカでも、『朝日』と『日経』を取っていますし、プラスアルァとして、ハワイだったらハワイのローカル新聞を読む、いろんなところを回っているときはその地域のローカル新聞を読むようにしています。
 様々なメディアをまとめていて、横断的に情報が取れるものは便利ですよね。例えば、海外の情報だと『クーリエ・ジャポン』を選びます。こうした情報誌を読むことで、多種多様な視点を持ったそれぞれのメディアの情報を一気に集めることができますし、自分がいつも見ているメディアとは違う角度からの情報を得ることができるからです。そうすることで、色々な視点で一つの事象を判断することができるようになります。日本では『選択』という情報誌があります。『選択』では、政治とか経済とか様々なオピニオンを集めています。雑誌や情報誌については、あまり深く読み込まないということがポイントかと思います。全部読もうと思ったら、ほとんどそれだけで1ヶ月経ってしまいますから。とにかく気になったところだけを読むんです。常に読んでおくと、なんとなく目に入るものがあります。「定期的になんか同じようなことを言っているな」とか、「最近こういうこと言われるようになったな」とか、そういったことを感覚的にでも分かっていれば、「時代のうねり」が見えてくるようになります。
 ここで気をつけなければいけないのは、メディアの情報は偏っていることが多いということです。特に新聞は分かりやすいんですけど、『朝日』と『日経』では、視点が全く異なるじゃないですか。片方ばかりを読んでいたら、たぶんすごく偏った判断になってしまうと思います。『朝日』は労働者寄りだし、『日経』は経営者寄りだし。偏っているということを前提に、より多くの新聞や雑誌をスピーディーに読むことによって、俯瞰的な見方ができるようになって、すぐには目につかなくても「うねり」が見えてくるのではないかと思います。
 もう一つ大切なのは、自分の仮説を持って情報に接した方が良いということです。僕の場合だったら、「無名の個人の時代が来るだろうな」と思って、そういう視点で情報を見ていくと、自分の仮説の裏づけになる情報が目に入ってくるようになるわけです。自分の仮説が間違っていれば裏づけが全然とれないので、「この仮説はちょっと違うな」といった判断ができます。例えば、僕はリーマンショックの1年前にほとんどの保有株式を売却しました。メディアや営業の人は「まだ上がります」とか「今が割安です」とか言っていたのだけれど、絶対にそれはないと確信していたんです。仮説をもって情報をインプットするように意識すると、情報に踊らされずに済むという利点があります。
―本田さんは、活字情報から得られるものだけでなく、ハワイと日本を往復しながら、シリコンバレーや上海など世界中を飛び回り、現場を見ているからこそ「うねり」を感じ取ることができているということでしょうか。
 多分、実際にいろんな地域に行くことやいろんな人に会うことも重要だと思います。どれか一つだけではやはり偏ってしまいます。個人から得られる情報も偏っている可能性がありますし、実際に海外に、例えばアメリカに行って、目の前の状況が不況だとか好況だとか分かったとしても、訪れた場所のことだけかもしれないじゃないですか。つまり、ある一点の地方の状況でしかないわけです。だからこそ、自分の仮説をもとにいろんな情報を見ていくことによって、情報の精度を上げることが重要になるんだと思います。「このメディアで言っていたことと、現地で見たものとはちょっと違うな」とか、「あの人が言っていたことを考えると、この情報は違うんじゃないかな」とか、「この人はちょっと極端だな」とか、そういう判断ができるようになる。生の声と活字の情報と現場を見れば、「うねり」がよりくっきりと見えてくるのかなと。ただ、絶対はないということです。どう考えても預言者にはなれないですから。そういう前提で判断しないといけない。
 時代の変化を感じ取ったあとは、自分の行動に対して、どうリスクを取れるのか考えることです。取り返しのつかないリスクを取ってしまうと、情報収集にかけた時間や投資よりも損失の方が大きくなってしまい、結構大変な失敗につながってしまいますからね。ある程度リスクを減らすことはできます。100個リスクがあれば、10個くらいまでは減らすことができるでしょう。でも、0にはならない。できる限りリスクを減らしてから失敗したものはしようがない。けれども、リスクを減らす努力をしない人は割と多いのではないかと思います。目の前にある情報について、それっぽく知っていそうな人やメディアが言ったことを真に受けて、なんとなく判断してしまい、うまくいかなかったという話はよくあります。そのため僕は、最適な判断ができるようにリスクを減らすための努力に時間をかけています。
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