日垣隆全巻所収『電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。』を読む。

6月 6日 | 投稿者:記者 | 書評, 起業家, 電子書籍
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電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。
日垣隆著(講談社、2011年4月)

こう考えれば、うまくいく。』『少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ《増補改訂版》』『勝間和代現象を読み解く』『電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。』の4冊を、続けて読む。視点や切り口が鋭く鮮やかであることに加え、どのテーマも、著者が深く、長く思考を重ね続けてきたものばかりであり、その年輪が、一つ一つの文章に特別な力を与えている(勝間和代~は比較的最近の現象を小冊子にまとめた、他3冊に比べると軽めのものではあるが、家族や離婚、女性の仕事などについて、同じく著者の、深く、長い思考の跡が読み取れる)。

日垣氏の本を読もうと思ったきっかけは、当書店の店主が始めたツイッターを覗き見ていたところ、たまたまタイムライン上を著者の「武勇伝」が通り過ぎ、何かな?と単純、素朴に関心をもったことによる。当書店での取り扱い状況を調べてみると、ビジネス書、経営書を全巻セットで(1冊でも可)販売するというコンセプトの書店とすれば当然とも言えるが、販売されていたのは勝間和代全巻に登録されている1冊のみであった。仕方なく!大手書店で10冊ほどまとめ買いをし、まずは上記4冊を読んでみる。著者の仕事の中心は本格的なルポルタージュであるが、すぐれたビジネス書、経営書も多いことを知り、早速「日垣隆全巻」を作成した。参考までに、こちらは「勝間和代全巻」である。

無名の若者による創業期のベンチャー企業への投資育成を生業とし、昨年からは当書店の店員としても働いているものの、読める本には限りがあり、「全巻」の中でこれまでに辛うじて読んだことがあったのは、学生時代に手にした『<検証>大学の冒険』(絶版)だけだった。今回読んだ4冊は、書店の一店員としては勿論のこと、本業の投資育成業においても多くの示唆に富んでおり、さらに言えば、人生をたくましく生き抜く上で、もっと早く知っておきたかった「全巻」である。

例えば、何度か失業や倒産を経験しながら29歳で文筆業として独立した著者による、『こう考えれば、うまくいく。』には、起業を真剣に考えている人たちが読むと良い心構えや具体的方法が満載だ。’10年を電子書籍元年とする識者たちには信じがたいかもしれないが、既に’87年から電子書籍への取り組みを準備し続けてきたという筆者の根底にある思想は、次のような言葉が教えてくれる。起業家の言葉そのものである。

「私は、自分の時間とお金と自由くらい、自分で制御したかった。日本や世界の経済状況がいかなる事態になろうとも、個人としてその情勢を正確に分析したうえで、抜け道、と言って聞こえが悪ければ、将来に結びつく道をきっちり早目に見つけ出す。そういう力だけは、サラリーマンにも自営業にも主婦にも学生にも必要だと思う。」

さて、本題の『電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。』だが、著者が電子書籍について準備を始めたのは、前述の通り’87年であり、「最初のフロッピー電子書籍は同年中に、自分のサイトは’97年から、電子週刊誌は’00年、電子書籍は’01年から作り始めた」とある。また、無料メルマガ(電子週刊誌)として’00年にスタートした「ガッキーファイター」は、’02年10月に日本で初めて、クレジットカードでの課金が可能な有料メルマガとなる。当時カード会社は、物品への課金は良いが、情報への課金は認めないという姿勢であったという。

それらの先見性、旺盛な起業家精神の結果、’11年4月20日現在では、同サイトでしか買えない、180点あまりものオリジナルコンテンツが販売されている(2年以内に500コンテンツを目指すという)。当然ながら再販制の影響は受けず、売り手が自由に値段をつけ替えることが可能である。今では、電子書籍関連のニュースで昨今話題になった、五木寛之さんよりも、渡辺淳一さんよりも、村上龍さんよりも、大沢在昌さんよりも、京極夏彦さんよりも、さらには、’10年の電子書籍最大売上部数の『もしドラ』よりも、個人トータルとしての電子書籍売上総数は上回っているという。

その試行錯誤、奮闘努力、透徹された社会分析、失業中の’86年末にボロアパートの黒電話から『ワシントンポスト』にアクセスし、「ウォーターゲート事件」の膨大な記事が表示された瞬間に流れた涙のこと、などなど、具体的記述は本書に譲るとして、ただ単に紙の本を電子書籍にすることは、「紙」にとっても、「電子」にとっても、求められていないと繰り返し説かれている。大切なのは「新しい組み合わせ(編集)」なのであり、その結果こそが、電子書籍売上日本一である。それにしても、電子書籍への準備に’87年から取り組んできたというのはあまりにも早い。国内でインターネット関連のベンチャーが現れ始めたのは、’90年代の半ば頃からではないだろうか。作家(という起業家)の先見性が、(ベンチャー)起業家のそれを遥かに超えている。

後編に収められている、ツイッターをきっかけにしたアラフォー男の再婚物語も微笑ましい。

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