『真の指導者とは』-信長、ナポレオン、毛沢東、本田宗一郎をはじめとするリーダー達に学ぶ

6月 8日 | 投稿者:店長 | 書評
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真の指導者とは真の指導者とは
石原慎太郎/著
起業や経営を生業にする者として、常日頃リーダーシップについて考えさせられる機会は多い。3月11日の大震災の発生により、あるべき指導者像というものについて、より一層深く考えるようになった。そのような中で、4月10日に行われた東京都知事選で約261万票を得て圧勝し、4選を果たした石原慎太郎氏が提言する『真の指導者』論に関心をもち、手に取った。第一刷は2010年7月30日、第二刷が2011年4月20日。

政治信条の違い、歯に衣着せぬ著者の発言には賛否両論あると思うが、本書では歴史工学の視点から指導者たる者がいかにあるべきか論じられており、大小さまざまな集団・組織を率いる上で示唆に富む内容が収められている。

冒頭は自立、独立について。国家、企業、あるいは個人が自立し、繁栄するということ、つまり独立を果たすのには、己の主体性を明示することだと説く。協調も当然必要だが、主張のない者に相手が敬意を抱くはずもないし、相手を敵視するということではなく、自らの自立・独立を主張するときに、それを阻害し得る他者として相手を意識することは、実はあくまでも本当の協調なり協力の前提にほかならないという。まさにその通りである。

リーダーである前に、個人としてどのような心構えが必要か、本書でも紹介されている明治の先覚者、福沢諭吉『学問のすすめ』の一節が心に響く。

「独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず」

「自分がやるんだ」という強い自覚のない者が、「この国はだめだ」といっても、それは親身のものではないということである。福沢諭吉は「国」と表現したが、仕事においても同様のことだろう。「独立の心」とは、自分さえよければ他人のことには我関せずというスタイルとは対極にあり、他者との関わりの中で自分としての昂然とした気概を持つ人間の心情なのだという。

信長、ナポレオン、サッチャー、ベングリオン(イスラエル初代首相)、毛沢東、児玉源太郎、吉田茂、松下幸之助、井深大、本田宗一郎をはじめ、歴史、政治、行政、軍事、経営、思想、スポーツなど実に多種多様なリーダーの言葉、思想、実践が紹介され、『孫氏の兵法』、マキャヴェリ『君主論』、クラゼヴィッツ『戦争論』、勝海舟『氷川清話』などからの考察も加わり、重層的にリーダーシップについて語られている。

筆者は、リーダーの大きな役割と責任として、大目的を持つこと、大戦略を持つことを挙げている。その中で、10年先を現実のものとして見て果敢に決断し、実行したリーダーの挿話が印象深い。
例えば、米倉誠一郎氏の著書『経営革命の構造』からのエピソードを基に、川崎製鉄の社長だった西山弥太郎氏について書かれている。西山氏は、戦後の復興期に差し掛かったばかりの昭和25年(1950年)に「鉄はやがて木材より安くなる、いや必ず木材より鉄を安くしてみせる」といい、資本金6億円の会社が163億円投じて、大規模な製鉄所を建設したという。当時の新聞からは「無駄な二重投資」「素手で太陽をつかむ」などとそしりを受けながらも、結果として日本経済の復興、成長を導いた。

同じく10年先を見据えることの重要性を本田宗一郎氏の逸話から説いている。
昭和27年(1952年)、当時資本金わずか600万円の本田技研は、主要先進国から最新鋭の工作機械を4億5,000万円もかけて輸入した。本田宗一郎氏やホンダについて書かれた本を読んだことがある人にとっては有名な話である(本田宗一郎全巻を参照)が、筆者は更に一歩踏み込み、本田宗一郎氏の決断の背景にまで迫り、真の指導者について論考している。

本田宗一郎氏はのちに
「企業をその時点だけのそろばんで判断するのならば、この決定は無謀だと非難されても当然だったろう。しかし、三年先、五年先、十年先を考えたときどうしてもやらなければならないことだった。かりに本田が倒産し私たちが去っていっても、従業員とその設備は日本のために生き続けるのだからと決心した」
と述懐していますが、こういう「予見」「予感」というものが変動の時代には優れたリーダーにとっての絶対必要な条件になってくる。

紹介した2つのエピソードは、本書の中のごく一部に過ぎない。
本書では、非常に数多くの詳細かつ具体的なエピソードから、リーダーに必要な要件を抽出し、導き出している。

優れたリーダーたちが何を思い、どのように考えを持ち、決断し、実行したかを知ることは、指導的立場にいる人のみならず、「独立の心」をもって社会に立とうという全ての人にとって有意義なことではないだろうか。

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