やはり『
戦わない経営』が一番思い入れが強いですね。『戦わない経営』を出すときに、自分で経営をしてきたことや、様々な方々の経営を見てきたことから、経営って幸福追求型じゃないといけないんだなと思ったのです。大学でも勉強して、会計事務所でも経営を見てきましたが、経営の究極的な目的は関わる人を幸せにすることだと思いました。そのような考えが、当時は常識的ではなかったと思います。だから、それを伝えたいと思って書きました。
創業して何千人という起業家や経営者にお会いしてきた中で、一時的に成功するのはそこまで難しくないかもしれないけれども、成功し続けるのは結構大変だなと思うようになったのです。成功し続けるためには、社長が勉強し、成長し続けるしかないと思います。『戦わない経営』は母性的な本です。その後、出版された『
仕事は味方』なども起業家を認め、励ますような、割と母性的な本でした。しかし、経営は母性だけでは駄目だなと思って、父性を全開にして「経営者はこうあるべきではないか」というような厳しいことを伝えようと思い、『社長の仕事』を書いたのです。
『
影響力の武器』*5 という本です。割と古い本なのですが、影響力を科学的に考察している本で、人に影響を及ぼすというのはこういうことなんだな、ということが分かります。才能がある人が他人に影響を及ぼせると思いがちなのですが、そういうことではなくて、科学的に影響を及ぼすことができるということが書かれています。
影響を受けるという意味では、自分で書いた本もそうです。自分で書いていることなので、絶対に出来なければいけないですし、やってきたことでなければいけないと思います。教える者が一番学べるということかもしれないのですが、良い意味で自分で書いた本に影響されています。
本は勿論のこと、私達の起業支援を通じて、一時的な成功ではなく、継続的に成功し関わる人たちから尊敬し愛されるような会社が増えることを願っています。
*4 2006年、代表の村上太一氏が早稲田大学1年生の時に創業した。2011年12月東証マザーズに、2012年10月に東証一部に、ともに史上最年少(25歳)で上場した。
*5 浜口氏が読んだと思われるのは、1991年に誠心書房から出版された初版の『影響力の武器』である。2007年に同じ誠心書房から第二版が出版されている。第二版では、初版の内容に世界各地の読者から寄せられたレポートを追加し、より身近に詳しく「影響力の武器」を描き出している。