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渋澤健氏インタビュー
[更新日2010/04/28]
「次世代に紡ぐ想い。~滴から大河に。渋沢栄一の教え~」第3回
聞き手 / PE&HR株式会社 代表取締役 山本亮二郎
■安定した長期の資本供給
―最終消費者の声を集めてマネジメントに届けることで「対話」するということですね。
 経営者って孤独ですよね。コモンズが投資しているトヨタ自動車(※16)で起こったリコールにしても、社長の豊田章男さんが悪い人だとは思わない。あんなに大きな会社は、上がってくる情報のルートが決まっているだろうし、いろいろな組織レベルでフィルターがかかっているでしょう。「俺はそんな話聞いてないよ。何でそんなこともっと早く言わないんだ」と何回も思う部分があったと思う。我々が提供できる視点に、すべて答えがあるとは思わないけれども、経営者に対して「そういう考え方があるのか、そういう視点があるのか」という一つの気づきを与えることができれば、企業価値をつくることに貢献できるのかなと思います。
 我々運用会社の役目は、企業価値を「つくる」ことではなくて、企業価値を「見つける」ことであり、それを伝えるということ。メディア会社のような位置づけだと思います。そのために、最終消費者でもある個人の方々に対して、長期投資を勧めています。
 「30年は長いから、せいぜい10年でいいよ」という人がいるかもしれない。それでもいいんですよ。長期的な視点で企業を応援する人たちの資本が、資本市場に流れるじゃないですか。これからの日本を引っ張っていくような、応援したいと思える会社に、安定した長期の資本供給ができるということが大事なんだと思います。
―コモンズ30ファンドでは満期がないということですので、コモンズ投信としてはコモンズ30ファンド1本を運用していくということでしょうか。
 コモンズ30ファンドは30銘柄にしか投資しないので、ファンドのサイズに限度がくると思うんです。といっても遠い将来のことなので、今心配しなくて良いのかもしれないのですが、ファンドの規模が大きくなりすぎたときには、新しいお客様をお断りしなければならないですね。将来的には、別のファンドを立ち上げなくてはならないかもしれません。
―限度とは、だいたいどのくらいのファンド規模をイメージされているのでしょうか。
 当初設定した上限は500億円で、追加で3,000億円までを限度としています。現状は、2010年3月末の純資産が約6億円です。それが60億円、600億円にならないと、会社としては黒字化してコモンズの株主にリターンを還元できない。ただし、大きな特徴としては、7割強が毎月の積み立てのお金だということです。ということは、まだ小さなファンドなんですけれども、毎月純増していくんですよ。現金が純増していくと、幅広い選択肢がとれるじゃないですか。そうすると、ファンドとして比較的インパクトを持てる。ビジネスモデル的に見ると、積み立てられていくので見通しがつきやすい。現在は「向こう岸に丘が見えるけれども、あそこまで泳ぐのに何キロあるんだ」と距離を測っている状態です。向こう岸が見えることは心強いですが、到達するのにどのくらいの時間がかかるのかいうことがまだ明確にはなっていないのです。ありがたいことに、毎日、口座開設の申し込みを頂戴していますが、なるべく早く向こう岸に近づくようにしたいですね。
■対話を重視した直接販売
―直接販売にこだわって募集をされるのは大変だと感じられますか。
 大変ですね。株式投資への関心など環境もあると思いますけれども、それ以上に、「直販」が大変ですね。しかし、このこだわりは大切です。コモンズ30ファンドでは、お客様との対話性を重視しています。販売会社さんを通じて売ってしまうと、我々にとってのお客様が個人投資家の方々ではなく、販売会社さんになってしまう。だから、我々と限りなく同じ目線でやっていただける販売会社さんでないと売っていただくのは難しい。一気にお金が集まっても、一瞬で逃げてしまうようなお金では困りますので、基本的に直販でやっているのです。
 コモンズについては、クチコミで知っていただく方が多いですね。メディアに取材してもらって、面白いと感じていただくことも多いと思います。多くがネットで検索して申し込みをしてもらうパターンです。すごく原始的で、非効率的な手法かもしれないですけれども、「伝える」「対話する」ということが大事だと思っています。
―たとえば、「ビジネス書全巻ドットコム」の読者や若い方でも手軽に始められるのでしょうか。
 もちろんです。3,000円からできる積み立て投資ですので、始められない理由はありません。3,000円という金額に設定したのは、できる限り金額で壁をつくりたくなかったからです。3,000円でも5,000円でも、当社にとって最初はコスト割れしてしまいます。けれども、10年、20年、30年と長期でお付き合いいただけるのであれば、それなりのリターンを返しても十分にペイすることができると考えています。
 どちらかというと金額うんぬんではなくて、30年先のことを思って今から行動できますかという点に壁をつくりたかったんです。20代の方でしたら、3,000円というと月1回飲み会を我慢するぐらいの金額ですよね。物理的には手が届く商品なので、積み立て投資をすることは可能です。でも、心理的にはちょっと壁を感じるかもしれません。「30年先のことを考えて今から投資しましょう」と言っても、心に響かなければご縁がなかったということになります。金額でご縁がなかったとは、言いたくなかったんです。
―佐藤明さん(※17)がコラムのなかで、「経営の質というのは株主の質である」ということを書かれていて興味深かったのですが、渋澤さんはどのようにお考えでしょうか。
 それは、ベンチャーキャピタルファンドでもそうですよね。投資ではLP(Limited Partner、有限責任組合員)のお金の特性によって運用が変わります。会社だって同じだと思います。
 投資のパフォーマンスを決める要素は主に3つあると思っていまして、一つ目は「ファンドマネジャー」の能力、目利き、経験で、すごく大切な要素です。二つ目は「環境」。これは大きなファクターだと思います。マネジャーがいくらすごい経験を持っていても、パフォーマンスは環境に左右される面が大きいと思います。環境が良ければ、全然努力しなくても儲かるじゃないですか。三つ目は、出資者といいますか、「資本の質」だと思うんです。我々の場合は、7割強が積み立てで構成されていますので、毎月資金が流入します。それも、30年という長期の考え方に賛同していただいた方々から集めた資本ですから、投資を実践する際の手の打ち方に選択肢が取れると考えています。
[撮影:大鶴剛志]
※13 コモンズ30ファンドは、30年目線の超長期投資、30銘柄程度の厳選投資、対話型投信等の特徴をもつ。経営理念や企業文化(DNA)などの組織資産、人的資産、顧客資産など企業の「見えない資産」も重視した投資をするため、日々の調査活動において、双方的対話を行っている。
参照:コモンズ30の特徴
※14 M&Aコンサルティングを核とする村上ファンドを創設した人物。豊富に現金や遊休資産を持つ会社の株式を取得し、有効活用を提案し、株主を軽視する経営陣を批判していたことから「もの言う株主」として、マスコミから注目を浴びた。
※15 アメリカに本拠地をおく、アクティビスト・ヘッジファンド。日本では、サッポロホールディングスやブルドックソース、アデランスホールディングス等のTOBを仕掛けたことで有名。
※16 トヨタ自動車については、トヨタ自動車全巻を参照ください。
※17 コモンズ投信 社外パートナー。野村證券、野村證券金融経済研究所を経て、2001年バリュークリエイト創業、パートナー。野村證券金融経済研究所では総合重機械、運輸、建設工事、公益、商社などを担当。1995年日経アナリストランキング企業総合部門第一位、1994年から2000年同造船・プラント部門7年連続第一位。
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