真山仁著「グリード(上)(下)」
10月 29日 | 投稿者:takuya kishimoto | 書評企業買収、再生の世界を克明に描き、ドラマ、映画化もされたハゲタカシリーズの4作目である。真山氏の丹念な取材によりシリーズ全巻を通して徹底してリアリティが追求され、それが作品の面白さに繋がっている。
真山氏いわく、グリードというタイトルは、この言葉が日本人とアメリカ人の違い、さらに金融という作品の柱となるものを非常に象徴できると考えたことから付けられたものである。リーマンショックが舞台となっている本作品では、リーマンショックがよく分からないという人にとって分かりやすい解説がなされているだけでなく、真山氏なりの原因究明が行われている。
以上のような面白さもさることながら、本作品は単純にスリル満点で痛快な小説として読めるものであって、経済がよく分からないという人にも気軽に手にとってほしい一冊である。主人公鷲津政彦の生き様に憧れを抱く人も多いのではないだろうか。誰に対しても物怖じせず、自分の信じる道を突き進むという人物像は、昨今脚光を浴びた半沢直樹シリーズに相通じるものがある。半沢直樹シリーズが好きだという人にはぜひ読んでほしい一冊である。