会計入門書の決定版
10月 27日 | 投稿者:T. H. | 書評この本は、決算書を作成できるレベルほどの会計知識は必要とはしないが、財務諸表を読めるようにはなりたいというビジネスマン、投資をしたい方、学生の入門書として最適な1冊だと思う。会計知識が全くない人でもすらすら読めるということは、本書の購入当時全く知識の無かった私の経験から断言できる。
そのようにすらすら読めるようたらしめている本書の特徴は以下の3点に集約される。1つ目は、図をふんだんに盛り込み、イメージが湧きやすくなっていること。2つ目は、具体例を用いた説明であること。3つ目は、説明する順序がすべて同じであること、である。本書の多くのページは、小さな物流会社を設立した場合に行う企業活動の1つ1つに対して、どのような会計処理をするのかを、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)の概念図とともに、同じ順番で説明されており、それまでの説明からわかっている部分は飛ばし読みできるようになっている。
また、本書のタイトルの由来でもあるが、財務3表の全体像がつかめるようになっており、会計処理1つ1つは理解しており木はよく見えるが、全体像である森がいまいちわからない、という既に簿記や会計を勉強してきた人の理解をより深めることにも役立つ一冊である。
これは、本書の説明がPL、BS、CSがどのようにつながっているのかに重点を置いて説明しているためである。たとえば、PLの当期純利益はBSの繰越利益剰余金と繋がっていることや、BSの現金及び預金とCSの現金及び現金同等物の期末残高が一致することなどである。これを、上述の会計処理1つ1つで説明しているため、本書を読み終わるころには、必ず理解して人に説明できるレベルになっていると思われる。
そして、この本は、よくある会計操作を見抜く方法や、新会計基準での会計処理方法、M&Aや事業再生における会計処理についてまで平易な文体で記述されている。つまり、本書は、読破することで会計の基礎基本から、会計の全体像を、そしてより実践的な内容まで、すらすら学ぶことができる大変お得な1冊である。