池井戸潤著「果つる底なき」

10月 22日 | 投稿者:takuya kishimoto | 書評
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978-4-06-273179-9半沢直樹シリーズで一躍脚光を浴びた池井戸潤氏の第44回江戸川乱歩賞受賞作である。著者の他の作品と比較するとかなりミステリー性の強い作品ではあるものの、他のミステリー作品とは一線を画す。江戸川乱歩賞選考委員であった阿刀田高氏はこの作品を「銀行ミステリーの誕生を宣言する作品」と称している。

著者は銀行で勤務していた経験を持ち、それゆえ銀行ならではの人間関係、銀行と企業との取引関係などが仔細に描かれている。銀行とは、銀行員とは、を教えてくれる小説であるともいえる。もっとも、この小説の面白さはこうした銀行の内幕の仔細さにあるのではなく、主人公たる銀行員の伊木という人間の描き方にこそある。善悪を判断することはさほど難しくなくとも、それを実際に行動に移すことは極めて難しい。そうした難しさがこの小説では実に巧みに描かれているのだ。主人公が巨大な敵に対して敢然と立ち向かっていく姿に勇気を与えられるとともに、本の前で思わず拳を握ってしまう作品である。

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