池井戸潤著「ルーズヴェルト・ゲーム」
10月 22日 | 投稿者:takuya kishimoto | 書評本書は池井戸潤氏の直木賞受賞後第一作となる本である。ルーズヴェルトゲームとはフランクリンルーズヴェルト大統領が野球において一番面白いと考えた8対7のスコアを指し、本書ではまさにそうしたルーズヴェルトゲームのように物語が進行していく。さまざまな人物の視点からその深層心理を描いていくという池井戸氏ならではの手法がとられ、主人公らしい主人公がいないことが本書の大きな特徴である。
本書ではかつて社会人野球の名門として名を馳せていた青島製作所野球部を通した青島製作所に係わる人々の内面や心情が巧みに描かれている。プロとは異なる社会人野球という少しマイナーな世界を垣間見ることができるのと同時に、企業人の苦悩、葛藤を池井戸氏ならではの切り口で見ることができる。登場人物に自分を重ね合わせてみてしまう人も多いのではないだろうか。
野球というスポーツが媒介になることによって、読書があまり得意でないという人にとっても読みすすめやすい内容となっており、またクライマックスに向けて怒涛の展開をみせる本であるため一気に読破することができる。明日からも頑張ろうという活力を与えてくれる一冊。