これからの正義の話をしよう -ハーバードで14,000人が履修した超人気講義-
3月 10日 | 投稿者:旅人 | 書評『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』
マイケル・サンデル/著 鬼澤忍/訳
本書は、例え話や過去の出来事を巧みに用い、また様々な視点から「正義」を捉えています。「正義」という唯一無二の絶対基準があると思われがちな道徳的価値観について考察することで、人間やその生き方について考えが深まります。
合理性の高いビジネスの世界においても、重要な局面、判断において感情が与える影響は小さくありません。自分自身の感情さえ、その理由を分かっているようで分かっていないものです。他者については尚更です。本書はそれを紐解く一助となってくれます。
また、人間の成長や成熟、良心についても考える題材を与えてくれます。
改めて自分自身について考えるためにも役立つように思います。
なお、アリストテレス、カント、ベンサム、ロールズなどの様々な哲学が登場しますので、価値観の変遷がよく分かります。名誉を重んじた時代もあれば、奴隷制のように著しく自由を欠いていた時代もありました。
現代はと言えば、経済的価値と自由に偏重しているような印象を持ちます。
著者の主張は控えめな本書ですが、新しい時代、価値観が生まれてくる期待のようなものを感じました。
次回は『ニーチェの言葉』を取り上げたいと思います。